映画『螢の光』(1938) 高杉早苗、輝く。

11月26日は女優・高杉早苗さんの命日です。
(たかすぎ さなえ、1918年10月8日 – 1995年11月26日)

今年で生誕100年、亡くなられてから23年になります。
香川照之さんのお祖母様であります。

『螢の光』は高杉さんが19歳の時の作品です。
さっそく観ていきましょう。

本作での高杉早苗さんは光り輝いています。
高峰三枝子さんとのダブル主役で、
卒業間近の女子高生という役柄です。

高峰[三枝]子 = 役名:三枝(みつえ)
高杉[早苗] = 役名:早苗(さなえ)

……なんとも分かりやすいネーミングですね。

先生に扮するのは桑野通子さん。

いつもの気の強いモダンガールとは打って変わって、
おしとやかな先生役を好演しています。

出だしは清水宏監督の『港の日本娘』
(1933)をそのまま取り込んだような構図で、
この後どうなるのかと思いましたが、
途中から一気に面白くなり、
とても良い時間を過ごさせてもらえました。

。。。あらすじ (ネタバレあります!)

卒業間近の仲良し女学生6人組が、
想い出づくりに箱根旅行へ出かける。

河原先生(桑野通子)も同行。
かしましい教え子たちを優しく見守っている。

先生はすでに退職が決まっており、
生徒と共に学校生活を終える。

その後は実家へ帰り、
父の農業を手伝うことになっている。

生徒の中でもとりわけ輝かしい未来が
開けていそうなのは三枝(高峰三枝子)だ。

ヨーロッパにピアノ留学という話も持ち上がっている。

三枝の親友・早苗(高杉早苗)は
京都へ嫁ぐことになっている。

周りからうらやましがられる早苗だが、
この結婚には哀しい事情があった。

父親が先方から金銭を融通してもらっており、
その代わりに娘を嫁にやるという、
いわば身売りのような結婚だったのだ。

しかも許嫁は寝たきりの病人。
早苗が看病しなければならない。

そんな早苗を憎からず想っている青年がいた。

女学生の間で“貴公子”と呼ばれている
イケメン・有賀(夏川大二郎)である。

じつは三枝のピアノ留学のために
奔走してくれているのが、この有賀なのだ。

のちに三枝も有賀に好意を寄せることになり、
ややこしくなっていくのだが、今はまだ良いお友だち。

有賀は何度目かのデートで早苗にプロポーズ。
すでに婚約していることを言いそびれる早苗。

なんとなく返事を保留、
というかんじで告白タイム終了。

有賀、あきらめた様子はまったくなさそう。

そして迎えた卒業式。
ここで予想外の展開。

あの大人しい早苗が
ハイヒールにドレス姿で現われたのだ。

(吉田秋生・原作、中原俊・監督『櫻の園』を思い出します)

そんな早苗に怒りをあらわにしたのが、
あろうことか親友の三枝だった。

……私たち、わかりあえていると思っていたのに
なぜひと言も言ってくれなかったの、など、
いろいろな感情がない交ぜになったのだろう。

そんな気持ちは早苗も同じで、
このあたりの言葉にならない混沌さが
とてもよく描かれていると思いました。

いい映画に当たって良かった……。

ここにきて初めて早苗は
結婚が決まっていることを打ち明ける。

同情を禁じ得ない三枝。
仲直りする二人。

三枝は早苗への協力を買って出る。

早苗は三枝の屋敷にかくまってもらうが、
有賀と三枝がヨーロッパに同行するという話を聞いては、
もういられない。三枝の家を後にする。

早苗は河原先生の実家を訪ね、
ひとまず住まわせてもらう。

そこへ早苗の父親(坂本武)が訪ねてきた。

河原先生、静かに、だが厳しく父親を責める。

寝たきりの夫へ
身売り同然の結婚は
早苗さんが可哀想すぎます。

それに対する父親の答えは意外なものだった。

早苗が家出してくれて本当は良かったと思っている。
あんな家へ娘を嫁にやりたい親などいるものか。
くれぐれも娘をお願いします。

……と言い残し、去っていくのだった。

これを陰で聞いていた早苗、
父親の後ろ姿を追いかけていく。

お父さん!

タクシーに乗りこむ直前、見つめ合う父と娘。

一瞬、滋味にあふれる表情、
だがすぐまた厳しい顔に戻り、
娘にひと言の声もかけず車に乗り込む父親だった。
(坂本武さんの演技すごかった!)

入れ違いのようにして、有賀が姿を現わす。

さっと身を隠す早苗。
親友をおもんぱかったのか。

有賀、とぼとぼと引き返していく。

それ以来、バーで毎晩飲んだくれる有賀。
そんな有賀を見て、三枝まで大荒れだ。

バーまで追ってきた三枝、

もう留学なんかどうだっていい!

とばかりにガンガン酒をあおる。

それでも有賀の心は動かなかったか。

三枝はその夜、自殺を図る。
未遂に終わるも、ほどなくして失踪。

新聞に大々的に報道される。

三枝は田舎の旅館でひっそりと静養していた。

だが容態が悪くなり、
いよいよ最期の時が迫る。

連絡を受けて駆けつけた河原先生と早苗。

彼女らに見守られて、
三枝は19年間の短い生涯を閉じるのだった。

(終)
 

写真は佐々木康監督映画『螢の光』より、桑野通子、高杉早苗、高峰三枝子のスリーショット写真です。

KUWANO Michiko, TAKASUGI Sanae, and TAKAMINE Mieko


 
感想。。。

他にもよいシーンが沢山ありました。

卒業式で、生徒たちが「蛍の光」を歌っているとき、
カメラが外に出て、いろいろな場所を散策していきます。

ガランとした教室が映し出されたときは
胸が締めつけられました。

また、微笑ましいシーンも。

早苗の実家は果物屋さん。
そこの小僧さんが早苗の母親(葛城文子)に
用事を言いつけられるシーンがありました。
「へーい」と落語の与太郎よろしく
下がっていく小僧さん。

あ、あともう一つ

と呼び止めるおかみさん。
戻ってきた小僧さんへひと言。

クラブ歯磨きね。アレを二つほど

……タイアップも
ここまであからさまだと気持ちが良いですね。

監督: 佐々木康
脚本: 斎藤良輔 荒田正男

出演:
桑野通子
高杉早苗
高峰三枝子
東山光子
夏川大二郎
小林十九二
山内光
坂本武
葛城文子
吉川満子