映画『兄とその妹』(1939) まっすぐに生きる佐分利信、桑野通子

Michiko KUWANO, Shin SABURI, Kuniko MIYAKE

佐分利信が実直で有能なサラリーマン、
三宅邦子がしっとり和服の似合う家庭的な妻、
佐分利の妹役に桑野通子、
先進的なキャリア・ガールを演じています。

彼女は日英の同時通訳ができ、
しかもその場でタイピングに移せるというのですから、すごい。

デリート・キーもバックスペース・キーもなかった
1930年代当時は一文字でもミスタイプすると、
修正するのが大変だったことでしょう。

名作の誉れ高い本作。
残念ながら今は観ることができません。

以前、YouTubeに上がっていた
動画を観たときの記憶と、
シナリオを元にレビューしてみます。

あらすじ (ネタバレしています!)

間宮敬介(佐分利信)とあき子(三宅邦子)は夫婦。
敬介の妹、文子(桑野通子)と三人で仲良く暮らしている。

文子は美しく、仕事のほうも男性顔負けで
かなりの高給を取っている。

しかしそれが却ってあだとなっていて、
文子に見合う結婚相手がなかなか見つからない。

また、兄の敬介もかなり仕事はできる。
(二人は会社は別々だが、
昼ご飯を一緒に取れるくらいには近い)

敬介は、上役と良い碁敵で、
毎晩のように相手をさせられ、帰りが遅い。

同僚たちからみると、敬介が出世のために
上役に取り入っているように見え、
かなり面白くない。

そんなとき、文子に見合いの話が舞い込んだ。
相手は敬介の上役の知り合いだった。

もし文子がこの話をOKすると、
敬介の出世は早くなるだろうが、
回りからは

妹の結婚まで出世の道具に使いやがって

と軽蔑される。

そこまで考えた妹は
 

この話、断わりたいの

 
と、兄に申し出る。

兄の敬介はこれを快く受け入れる。
そういう兄弟なのだ。

しかし、翌日、会社では
敬介が、自分の出世のために妹を結婚させたという噂が広まっていた。
(スパイはどこの会社にもいるものだ)

敬介に出世を追い越され、
鬱憤がたまりにたまっていた同僚が
激昂して、敬介を殴る。

同僚は、敬介にあらぬ噂を立てられて、
そのせいで追い越されたとも思い込んでいた。
(策謀する奴はどこの会社にもいるものだ)
敬介がいくら弁解しても、もはや聞く耳を持たなかった。

プライドを傷つけられた敬介も
だまっていられず、アッパーカットを食らわす。
(脚本に『アツパカツト』と書いていました)

その場で会社を辞めてしまった敬介。
夜の街をぶらつくが、いつまでもそうしてはいられない。
以前に独立した先輩(笠智衆)の元を訪ねる。

折良く、会社が軌道に乗り始め、
今度、満洲にも進出するという。
 

ぜひ、力を貸してくれ

と言われ、号泣する敬介だった。

敬介夫妻と妹の文子は満洲に移住することにした。

立川飛行場。
大陸連絡機が三人を乗せて飛び立った。

(ここからは脚本を引用させていただきます)

文子はふと、飛行機の車輪を見てつぶやいた。
文子「兄さん御覧なさい車輪に草がひつかかつてゐますよ」
敬介「成程、落ちさうにもないね」
文子「あのまゝ大陸まで行くのかしら」
敬介「行くかも知れない」
文子「日本の草が……丁度私達のやうね」
敬介「このまゝ落ちずに、大陸に根を下してくれ」
文子「お姉さん、御覧なさいよ」
あき子もそれをぢつと見てゐた。
飛行機は大陸に向つてスピードを續けて行つた。

──終──

感想。。。

愚直すぎるほどに、公明正大で、
清廉潔白な兄、敬介。
こういう役は佐分利信にぴったりですね。

バリバリのキャリア・ウーマンを演じる桑野通子。
しっとりとした和服の似合う三宅邦子。

キャスティングが決まってから、
シナリオ執筆に取りかかったのではないか
という気がしますが、もちろんこれは憶測です。

第二次世界大戦より前の日本映画では
『満洲』が新天地、あるいは
希望の地であるかのように描かれます。

今の時代から見ると、
そうでもなかったことは明らかなので
見ていて落ち着かない気分にさせられます。

そのへんは割り引いて、というか
当時の人々になりきって、
映画を観るべきなのかも知れません。

当時の日本の政策に
賛同までする必要はないでしょうが
せめて理解する努力くらいはしたいと思います。

「国策映画」「プロパガンダ映画」で
片付けてしまうにはあまりにも惜しい作品が
たくさんありますから。

何らかの形での復刻を強く希望します。

A Brother and His Younger Sister

監督・脚本:島津保次郎

キャスト:
間宮敬介:佐分利信
間宮あき子:三宅邦子
間宮文子:桑野通子
有田道夫:上原謙
行田富士夫:河村黎吉
志村荘六:水島亮太郎
有田新造:坂本武
内海清三郎:笠智衆
荒川清:菅井一郎
林要吉:奈良真養
沢田英二:小林十九二