お薦めマンガ5選「絢爛たるグランドセーヌ」「ぼくたちは勉強ができない」他

イラストはCuvie・著「絢爛たるグランドセーヌ」より、主人公・有谷奏(ありや・かなで)がクラシック・バレエのポーズを取っているところです。
Kanade ARIYA in [La Magnifique Grande Scène]vol.05 created by Cuvie

「絢爛たるグランドセーヌ」Cuvie・著


「子どもには時間も可能性も無限にある」
という言いぐさは、
一生懸命生きてこなかった無責任な大人のたわ言かも知れない。
このマンガを読んでそう思いました。

主人公の親友や、ライバルたちの誰もが
何らかの危うさを抱えているので、
読んでいてハラハラします。

むしろ、メンタルがいちばん強いのが主人公。
その点は安心して見ていられます。

ですがケガがつきものなのがバレエの世界。
さらに家族が協力的で、かつ
裕福でないと続けていけません。

成功への橋が、ガラス細工のように
もろいからこそマンガの素材として
最適と言えるでしょう。

それゆえ、このジャンルはつねに激戦区、
過去の名作と比較されることもしばしばです。

その点、本作はすでに名作の仲間入りを
果たしていると言えると思います。

画力は傑出していますし、
ストーリーも疾走感があります。

何より素晴らしいと思うのは
大人たちのキャラクター造形の奥行きの深さです。

今、少年少女たちはどの学校に進んだらよいのか迷い、
岐路を迫られていますが、どの進路を選んだとしても
(どの先生を選んだとしても)
何らかの可能性は閉ざされることになります。

100パーセントを兼ね備えた大人などいないからです。

もしかしたら誰かは選択肢を誤るかも知れません。
しかしもはや後の祭り。
人生にやり直しはない。
過去と折り合いをつけながら生きつづけるしかないのです。

……そんな厳しさを感じさせてくれるほど
登場人物たちのキャラクターは深く、
人間味を感じさせてくれます。

主役の少女たちは、まだセンター・ステージを
目指す云々ではなく、とにかく舞台の隅っこにでも
立てさえすれば嬉しい、そんな季節にいるようです。

彼女たちがこれからどう変化していくのか、楽しみです。
 

「ぼくたちは勉強ができない」筒井大志・著

勉強したいという気持ちを起こさせてくれるマンガです。

キャラの立て方が見事。
それでもまさか人気投票で先生が1位になるとは
予想外だったのではないでしょうか。

とあるベテラン作家さんの
マンガを読んでいつも思うのですが
(おそらくテコ入れのつもりで)
新キャラを投入すると、そこから
だんだんストーリーが停滞していくのです。

それでも才能あふれた方ですので
次から次へと新作を発表されています。

何が言いたいのかというと、さほどに
キャラクター作りは難しいものなんだなあと。
 

「愛人 AI-REN」田中ユタカ・著


タイトルとカバー表紙から察するに、
少女を愛人にする成年コミックかと
思っていたらぜんぜん違っていました。

どなたでも読める一般コミックスです。
「愛人」と書いて「アイレン AI-REN」と読みます。

世紀末を舞台に繰り広げられる
奇跡の愛の物語です。

作者の方が命を賭けて
この作品に取り組まれたということが
ひしひしと伝わってきました。
超名作です。
 

「ミミア姫」田中ユタカ・著


もはやマンガの枠を越えて
「神話」にカテゴライズしたいほどのレベルです。

やさしい両親の元に生まれたミミア姫。
愛情をたっぷりと注がれ、健やかに育っていきます。

しかしなぜか彼女の存在自体を
まがまがしいと思っている人たちがいて……。

可愛い女の子の顔を描けるマンガ家さんは
たくさんおられます。
(田中先生がその最右翼なわけですが)

ここにもう一つ条件を加えて、
「大人の顔もしっかり描ける人」
となると、その数はぐんと少なくなります。

本作品において、田中先生が描く
おばあさんの表情はものすごいです。

氷山の一角という言葉がありますが、
海面下の裾野のいかに広いことか。
基礎体力の圧倒的な違いを感じます。

田中ユタカ先生も、上でご紹介したCuvie先生も
成年マンガを並行して描いていらっしゃいます。

一般マンガで確固たる実績と人気をなした方が、
成年マンガを描き続けることに
矜持を持っておられるのはかっこいいです。

尊敬してやみません。

 

「クズとメガネと文学少女(偽)」谷川ニコ・著


なんと斬新なカバー・デザイン。
綾辻行人「十角館の殺人」が
レイアウトされているではないですか。

あの衝撃の一行にさしかかる瞬間の同級生の表情を
かたずを呑んで見守りたいという気持ち、
すごく分かるなあ。
2冊めのミステリは何を薦めるのでしょうね。

私なら森博嗣「笑わない数学者」か。
(誰も聞いていないって)

あのラスト一行の
美しさをわかち合いたいです。

誰も聞いていないついでに
叙述系で思い浮かぶのは。。。

森博嗣「今はもうない」
小泉喜美子「弁護側の証人」
(古いですが名作だと思います)
乾くるみ「イニシエーション・ラブ」

映画だと
『ファイトクラブ』
『シックス・センス』
『シャッターアイランド』
『情婦』

マンガだと
永井豪「デビルマン」

江川達也「東京大学物語」
…うーん、◯オチと叙述は別モノでしたね。