映画『ミツバチのささやき』(1973・スペイン) | 濃”蜜”な死の香り。

Ana Torrent in El espíritu de la colmena (1973)

見入ってしまいました。

二人の愛らしい姉妹がどうにか無事で生きていてほしいと、
ハラハラし通しでした。

それほど、映画の中に
死の予感が濃密に漂っていました。

いえ、ことによったらあの子たちは
どこかの時点で死んでいるのかも知れません……。

といったら勘ぐりすぎでしょうか。

スタンリー・キューブリックの「シャイニング」や、
ナイト・シャマランの「シックス・センス」は、
この映画からインスピレーションを
得ているような気さえするのです。

それからまことしやかに語られている「となりのトトロ」
(監督 : 宮崎駿)のサツキとメイは死んでいる……説も、
イメージの源泉は本作かも知れません。

実際、登場人物が寝ているシーンは
死んでいるようにしか見えませんし、
死を連想させるモノのオンパレードでした。

映画の中の映画「フランケンシュタイン」が
モチーフとなっています。

映画を見つめる子どもたちの表情が素晴らしい。

昔は、一本の映画がこれほどまでに重く、
深く受けとめられていたのですね。

もし私が今「フランケンシュタイン」を見ても、
この子たちの百分の一も感動できないでしょう。
反省。。。

ちょっとした間違いがつみ重なり、
どんどん追い詰められていく怪物フランケン。

「あと一歩まちがえば大変なことになる」
というボーダーライン上を、
この姉妹もフラフラ漂っています。

まあ、こちらが勝手に心配しているだけ
なのかも知れませんが。

いちおうあらすじを書いてみましたが、
これだけ読んでも「なんじゃこりゃ」って
なっちゃうでしょうね。

やっぱり映像が説得力を支えているのでしょう。

質感が抜群にいいです。とくに黒が。

姉妹が廃屋のまっくらな入口に
吸い込まれていくところなどは
息をのんでしまいます。

ぜひスクリーンでで観たい一本です。

 

あらすじ (ネタバレあります!)

村に巡回映画がやって来て、子どもたちは大喜び。
姉のイサベル(イサベル・テリェリア)と、
妹のアナ(アナ・トレント)は食い入るように
『フランケンシュタイン』を見つめている。

フランケンシュタインは誤って少女を殺し、
さいごには彼自身も殺された。

アナが姉に聞く。
「なぜ怪物は殺されたの?」

姉は答える。
「彼は殺されていない。精霊になり村のはずれで生きている」

姉妹は村はずれの廃屋を探検する。
が、誰もいなかった。

翌日アナがひとりで廃屋に行ってみると、
そこには大きな足跡が残されていた。

それ以後アナは、たびたび訪れるようになる。

ある日アナが廃屋をのぞいてみると、中に
青年(ジュアン・マルガロ)が隠れていた。

青年はケガをしていた。
彼は何者かに追われているようだ。

アナは食べ物と、父親のコートを無断で持ち出し、
青年に与える。

コートのポケットには父親の懐中時計が入っていた。
青年が懐中時計のフタを開けると、オルゴールが鳴り出した。

青年は、コートと食べ物のお礼に手品を披露してみせる。

その夜、青年は何者かに射殺された。

アナの父親が呼び出しを受ける。

おそらく青年が身につけていたコートか、
時計にアナの父親の名前が刻まれていたのだろう。

父親は死体の面通しをさせられる。

殺された青年と、アナの父親とは
とうぜん一面識もない。

ところでアナの母親だが、
彼女(イサベル・テリェリア)は、
昔の恋人らしき男と今も文通を続けているようだ。

父親は考える。
いったい誰が青年にコートを持っていったのか。

アナか姉のイサベルだとは思うが……、
殺された青年は、妻の元恋人だったという可能性もある。

父親はある実験をする。

家族全員が揃っている食卓で、懐中時計のフタをあけ、
オルゴールを鳴らしてみせたのだ。

激しく反応したのは、もちろん……

アナだった。

父親はアナを見つめるだけで、何も言わなかった。

アナは一人で廃屋に行ってみた。

青年がいない代わりに、血痕が見つかった。
アナを呼ぶ声がした。父親だった。アナは逃げ去った。

アナは夜になっても帰ってこなかった。
大がかりな捜索が行なわれた。

アナはその夜、フランケンシュタインを見た。

翌朝、アナは無事発見された。

しかし家族をうまく認識できないようだった。

医者(ミゲール・ピカゾ)は
「時間が解決してくれるだろう」と言う。

アナは精霊と話ができるようになっていた。
寝室のドアを開け、目を閉じてそっと呼びかける。
「私はアナよ。私はアナよ───」

 

原題 : El espiritu de la colmena

英題 : The Spirit of the Beehive

監督 : ビクトル・エリセ

出演
アナ・トレント(妹 アナ)
イザベル・テリェリア(姉 イサベル)
フェルナンド・フェルナン・ゴメス(父親 フェルナンド)
テレサ・ジンペラ(母親 テレサ)
ジョゼ・ビラサンテ(フランケンシュタイン)
ジュアン・マルガロ(逃亡者)
ミゲール・ピカゾ(医者)