映画『大統領の陰謀』(1976・アメリカ) | ニクソンを文字で撃つ。

Dustin_Hoffman,Robert_Redford

ロバート・レッドフォードの一人語りコメンタリが熱い。
本編より興奮した。
なんでも彼は、ニクソン大統領が辞任に追い込まれるはるか前から、この事件を暴き出した二人の記者、ウッドワードとバーンスタインに映画化を打診していたそうだ。
時期で言えば「追憶」「スティング」の頃だ。
初めのうち二人はまったく興味を示さなかったというから面白い。
ちなみに事件発覚からニクソン辞任までは約二年かかっている。

それから映画に使われているニュース映像は本物、裁判所も本物(日本じゃ考えられない)、新聞社も本物なんだけれど、その後「撮影がうるさくて仕事ができない」とクレームがつき、セットに移行したそうだ。
机からメモからコップから本物そっくりだと、R・レッドフォードが熱弁をふるっていた。

彼は自分がかかわった映画は見たくもないそうで、それだけにこの特典は貴重かも知れない。
しかしよくまあ30年も前の映画のエピソードが淀みなく出てくるものだと思う。
それも映画を見ているうちに当時を思い出すというのではなく、カットが切り替わった瞬間に「ここはダスティン・ホフマンとアドリブでいこうと決めたんだ」とか「ここの脚本は最高にいいんだ」とかポンポン出てきて、それでいて、本編の重要なセリフの時はしっかり口を閉じる。すごい記憶力だ。

だからこそ、本編の分かりづらさ、伝わりにくさを惜しく思う。
今からあらすじを書くの、気が重い(笑)。

はじめは日本語吹替で観ていたのだが、ところどころ日本語が流れない。
これは当時テレビで放映した時の吹替を使っているからだろう。
日本語が流れない部分はきっとカットされた部分と思われる。
けっこう細かく刈り込んでいるんだなあと、逆に感心したりして。

あらすじ(ネタバレあり)

1972年、ニクソン政権当時、野党である共和党本部に盗聴器を仕掛けようとした5人が捕まった。
この5人はそろって大金を所持していた上、官選ではなく個人の弁護士がついたことなどから、ワシントン・ポストの新米記者ボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)は、背後関係を洗い始める。

犯人の一人が所持していた住所録にコルソンとハントという男の名が記載されていた。
コルソンはニクソン大統領の特別顧問、もう一人の男ハントはCIAに長い間在籍し、古くはアイゼンハワーの選挙に関係し、エドワード・ケネディの資料を徹底的に調べていたという。

ウッドワードは官邸図書館に事実確認をする。
応対に出た職員は、その事実をいったんは認めたものの、その後手のひらを返すように前言を撤回。

ウッドワードは侵入事件の犯人とホワイトハウス・CIAの繋がりに関する記事を書いた。
草稿に目を通したカール・バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)は勝手に記事を校正し始める。
ウッドワードは怒ったが、たしかにバーンスタインが手を入れた文章のほうが分かりやすいし読ませる。
二人はこの事件に、コンビを組んであたることになる。

さて、官邸図書館がだめならばと、今度は国立図書館に出かけた二人。
膨大な量の貸出票を一枚一枚調べるという気の遠くなるような作業も辞さない構え。
しかしハントの貸出票はすでに何者かに抜き取られていた。

調査は暗礁に乗り上げた。
ウッドワードは謎の事件関係者“ディープスロート”という人物から、「金の流れを追え」とのアドバイスを受ける。

…ちなみにこの人物は2005年に自ら正体を明かした。
当時のFBI副長官マーク・フェルトその人だった。
彼のリーク行為については様々な見方があるが、ロバート・レッドフォードはコメンタリの中ではっきりと「倫理的に矛盾している」と指摘している…。

ここでライバル紙ニューヨークタイムズがスクープ。
民主党本部侵入事件の3ヶ月前、ニクソン再選委員会から犯人側に小切手が振り込まれていたことを突きとめたのだ。

バーンスタインは、小切手を押収した検事局に行き、資料を借りることに成功。
小切手を振りだした人物は、ニクソン再選委員会の選挙対策主任だった。
彼は、小切手を犯人にではなく、本部の財務委員長スタンズに渡したという。
バーンスタインたちはようやく金の流れを左右できる人物までたどり着いたのだ。

彼らは、ワシントン・ポスト社に勤務する、ある女性に協力を要請する。
その女性の元カレが再選委員会に勤めていることを思い出したのだ。

元カレからなんとかして名簿をもらってきてくれないかと頼むバーンスタインとウッドワード。
いやがる彼女に頭を下げるが、どうしてもうんと言ってくれない。それは当然だろう。
なおも食い下がるバーンスタイン。しかしウッドワードはあきらめる。
翌日、ウッドワードのデスクに無言で名簿を置いていく彼女。かっこいい!

その名簿を手に、これはと思う人物を訪ねまわる二人。
ほとんどの人が口を閉ざす中、わずかながらも糸口をほのめかしてくれる人もいた。

中でも財務委員長スタンズの前任者であるスローンという人物は有望に思えた。
党内の腐敗に耐えかねて辞めたという噂があったからだ。

二人は喜び勇んで会いに行く。
が、スローンは簡単には口を開いてくれない。
それでも調査は僅かずつ進展していく。

ついに買収資金の管理者が5人いるというところまで突きとめる。
その中には元司法長官もいた。

ここでバーンスタインにリークが入る。
リプレーという司法長官補からだった。
1971年、軍隊時代の戦友セグレティから、「ニクソンの下で民主党妨害を担当する弁護士に」誘われたというのだ。

彼らは、セグレティの旅行記録も入手する。
セグレティはウォーターゲート事件の一年前から、民主党大統領候補予選会にくっついて、ずっとアメリカ中を回っていた。
バーンスタインは彼にインタビューを申し込む。

セグレティのやり口はこうだった。
対立候補が使っている便せんを盗みだす。
その便せんを使い、相手が不利になるような文章をねつ造する。
ウソを流布し、評判を落とし、選挙を有利に運ぶ───。

セグレティは、大統領秘書チェーピン、大統領報道官ジーグラーと大学の同窓だった。
3人は、選挙戦で様々な策を弄して相手をつぶすという行為を、大学時代から行なっており、それをラット・ファッキング(ネズミ殺し)と呼んでいたという。

セグレティはバーンスタインに向かってうそぶく。
「では聞くよ。軍隊を出たばかりで、4年も世間を離れ、法律の使い道もない。突然、友人から電話で『大統領のために働け』と言われたら?」

ちなみにここは日本語吹き替えは入っていない。
こんないいシーンをカットするなんてもったいない!
バーンスタインたちはこの後、じっさいに誹謗中傷する文章を書いた人物を突きとめ、しっかり言質も取る。

話を急ごう、というか実はいまだよく分かっていないが(笑)。
ここに来て全貌はほぼ明らかになった。
セグレティをチェーピンが雇い、チェーピンをホールドマンが雇った。
黒幕はホールドマン(大統領首席補佐官)。
そしてその事を正義の人スローンは知っている。

しかしここで予期せぬ出来事が起こる。
大陪審の席でスローンは、ホールドマンの名を言わなかったのだ。
形勢は一気にホワイトハウス側にかたむく。

このへんがこの映画の分かりづらいというか、スッキリしないところで。
まあ事実を元にしているのだろうからしょうがないけれど。

スローンは大陪審でホールドマンの名を挙げるつもりだった。
だが、向こうからホールドマンについてひと言も聞かれなかった。
聞かれないのに答えるわけにはいかない、よって名前を言わなかった、というのが真相らしい。

しかし……これを書きながら私の頭の中ははてなマークでいっぱいだ。
大陪審って「十二人の怒れる男」みたいに被告不在で行なわれるものじゃないの?
あとでもうちょっと調べてみよう。
その答えを探すには、この映画以外の資料もあたらなければ駄目なような気がする。

映画は、ニクソンが聖書に手を置き、宣誓をしているテレビ映像に見向きもせず、ひたすらタイプライターを撃ち続ける(あえてこの漢字)ウッドワードとバーンスタインの姿で終わる。

最後に感想をひと言。
あんまり正義とか振りかざさず、ただひたすら真実を追求するところが良かった。
あとコメンタリを聞くまでまったく気付かなかったんだが、よく見ると社内に自転車の車輪が置いてある。
これは当時、実際に二人の記者のうちどちらかが自転車通勤していて、盗難防止のために車輪を外して持って上がってたんだと。
わかるわけねー!(笑)

All the President’s Men

監督
アラン・J・パクラ

脚本
ウィリアム・ゴールドマン

原作
カール・バーンスタイン
ボブ・ウッドワード
『大統領の陰謀 ニクソンを追いつめた300日』

製作
ウォルター・コブレンツ

出演者
ダスティン・ホフマン (カール・バーンスタイン)
ロバート・レッドフォード (ボブ・ウッドワード)

音楽
デビッド・シャイア

撮影
ゴードン・ウィリス

編集
ロバート・L・ウォルフェ

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