お薦めマンガ「花もて語れ」「ペリリュー 楽園のゲルニカ」他

イラストは片山ユキヲ・著「花本手語れ」のカバーより、主人公の佐倉ハナが大きな本の上に乗って空を飛んでいるところです。
Say it with flowers created by KATAYAMA Yukiwo

お薦めマンガ 5タイトル

「花もて語れ」片山ユキヲ・著

朗読をテーマとしたマンガです。

後半は、日本文学についての
良質な講義を受けているようでした。
学校の図書館にぜひ置いていただきたい佳作です。

芥川龍之介の「蜜柑」や「トロッコ」は
字面を追うだけなら5分とかからずに
読めてしまうかも知れません。

じっさい私はそういう読み方をして
読んだ気になっていました。

ですが、それではこの作品の
100分の1も理解していなかったのだと
いうことを、このマンガを読んで
思い知らされました。

ほかにも
宮沢賢治「注文の多い料理店」や
夢野久作「瓶詰地獄」
などがじっくりとていねいに
解き明かされていきます。
 

「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」武田一義・著

戦争マンガと聞いただけで
熱烈に応援したくなります。
編集さん、および武田一義先生の
気概と勇気に敬意を表します。

70年以上前、実際に起こったことを
もとにしたフィクションという体裁ですが、
マンガの中の人たちは今どきの言葉を使っています。

絵も可愛くてシンプルですし、
すんなり入り込めるように配慮が為されています。

ひとつ気掛かりな点は、
終着点が分からないところでしょうか。

本作が反戦マンガであるというのは
自明ですが、それがどの程度までなのか。

バスに乗りこんだものの、
行き先が明かされていないのが不安です。

(連載中のマンガはすべてそうだと言えますが)

戦争は二度とあってはならない、
で終わるのか。

戦争の責任は天皇陛下にある、
というところまで踏みこむのか。

私はそうではないという考えなので
そこがはっきりしないうちは
安心して一票を投じられないといったところです。
 

「エコエコアザラク」古賀新一・著

古いマンガですが、メチャメチャ嵌まりました。
黒魔術で人を殺しまくる女子中学生、黒井ミサ。
途中から、コメディ回も差し挟まれるような
ノリになるとは思ってもみませんでした。

後半は不発回も見受けられますが、
クリティカル・ヒットした回の
クオリティはとてつもなく高いです。

イラストは古賀新一・著「エコエコアザラク」より、セーラー服を着た黒井ミサが座っているカットです。

Eko Eko Azarak: Wizard of Darkness
created by KOGA Shin’ichi

「あしたは土曜日」山本崇一朗・著

山本崇一朗先生の画力には
あらためて恐れ入りました。
女の子たちのクルクル変わる表情を
見ているだけで幸せな気分になれます。

同じ作者の「からかい上手の高木さん」
ほどブレイクしなかったのは、
男子との絡みがあるか、なしかでしょうか。

ヒットする、しないの差は
ほんの紙一重なのかも知れません。
 

「妻をめとらば」柳沢きみお・著

バブル華やかなりし頃、
証券マンとして高給に恵まれながらも、
多忙な日々の中でなんとか時間をやりくりし、
恋人探し、お嫁さん探しをするという物語。

ラストは予想を裏切る悲しい終わり方。
「マンガの方法論1 おれ流」
によると、突然の打ち切り宣告に頭にきて、
ということのようです。
 

「翔んだカップル」柳沢きみお・著

むかし、映画で観ました。
ヒロインの山葉圭役に薬師丸ひろ子さん、
才女のクラスメイト杉村秋美には石原真理子さん、
ボクシング部員の田代勇介には鶴見辰吾さん。
たしか英語教師役で円広志さんが出ていたと思います。

映画は、勇介と圭の二人がめでたく結ばれる、という話だったはずですが、
原作はぜんぜん違っていました。

不動産屋さんの手違いで
一つ屋根の下に同居することになった高校一年生、圭と勇介。
ところがすぐにばれてしまい、ほどなく別居するんですね。
そして勇介はボクシング部も辞めてしまいます。

勇介の初体験の相手は圭でも杉村さんでもなく、
別の女の子だったというのも驚きです。

今読むと、杉村さんのキャラがメチャクチャ立っています。
ヒロインの圭より杉村さんのほうに魅力を感じてしまいます。
あくまでも今なら、ですが。

最初のほうはコメディの要素もあったのですが、
だんだんと展開が(いい意味で)重くなっていき、
不登校や、命を絶つ人もいたり、
どんよりとした曇り空がいつも
立ちこめているような雰囲気に覆われていきます。

後にも先にも、これほどリアリティに満ちていて、
主人公が悩みまくる少年マンガはなかったのではないでしょうか。

そして当時はこのマンガが一世を風靡したのでした。

待って。着替えてくるから

とは杉村さんのセリフですが、
少年マンガを描く人で、
こういう言葉がスッと出てくる人は
なかなかいないと思います。

イラストは柳沢きみお・著「翔んだカップル」より、山葉圭のアップです。

The Terrible Couple
created by YANAGISAWA Kimio