幸せは香りを放つ。「C.M.B.『歯医者』」加藤元浩・著(月マガ2019年11月号)感想

イラストは月刊少年マガジン2,019年11月号掲載「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」『歯医者』加藤元浩・著より表紙の一部です。七瀬立樹ちゃんが歯科医のコスチュームを着て、診察台に寝ている榊森羅くんを治療しようとしています
SAKAKI Shinra and NANASE Tatsuki in [C.M.B. op.144 Dentist] (Monthly Shonen Magazine 2019.11) created by KATÔ Motohiro

月刊少年マガジン2019年11月号より
「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」
のレビューをさせていただきます。

今回のタイトルは
「Op.144 歯医者 Dentist」

さっそくあらすじ紹介を。

歯医者さんに通院している、目下失業中の青年。
治療が終わって外に出たとたん
霧のようなものに包まれます。

霧が晴れるとなんとそこは、
さっきまでいた歯医者の待合室でした。

順番を待っている人たちは、
さきほどとまったく同じ顔ぶれ。

美人女子高生。
母娘と思われる二人づれ。

そして金髪を肩まで垂らした少年──
いうまでもなく、「C.M.B.」の主人公
榊森羅(さかき しんら)くん。

彼が大英博物館から叡智の称号を、
3つも与えられている天才高校生であることなど、
青年は知るよしもありません。

待合室では、治療を受ける前に見た光景が
寸分違わず、繰り返されています。

どうやら青年は過去に戻ってしまったようです。

しかたなく、ふたたび治療を受け、
外に出ますが、またもや霧に包まれ待合室に逆戻り。
青年は無限ループにはまってしまいました。

なんとかして抜け出さないと、と考えた彼は
色々なことを試み、状況を打破しようとしますが
ことごとく失敗。待合室に戻されます。

まわりは完全に、彼のことを
頭のおかしい人だと思ってしまいました。

まあでも前回までの記憶が残っているのは
青年だけなので、その点は救いです。

だんだんと打つ手がなくなってきた青年は、
ようやく森羅くんに声をかけます。

ちょっといいかな……今から変なことを話すんだけど

また変人あつかいされるかと思いきや、
この少年だけは、自分の荒唐無稽な話に
ちゃんと耳を傾けてくれました。

森羅くんは、一見なんの関係もなさそうな
「粘菌」の話をしはじめます。

じつは粘菌というのは、
迷路を最短距離で脱出するルートを
見つけ出せる能力を持っているのだそうです。

目、耳、鼻のない粘菌たちは
まわりにあるわずかなヒントを感じ取り、
そちらの方向に進んでいくのだとか。

今現在、袋小路に迷い込んでいる青年が
ヒントを発している「何か」に
気づくことができれば、
ループから抜け出せるのではないか、
と森羅くんは考えたのでした。

森羅くんのアドバイスをふまえ、
あらためてまわりを見回してみると
いくつかのモノが、ひとつの「未来」を
指し示していたことに気づく青年。

そこに至って、彼は初めて
いままで意識的に避けていた
ある「行動」をとることを決意します。

ヒントが発するかすかなメッセージに
素直にしたがってみることにしたのです。

何十回めかの料金を払い、
何十回めかの次回の予約をし終えて、
青年が外に出てみると、世界は──。

。。。というお話でした。

異色作です。
「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」
「Q.E.D. iff -証明終了-」
を通して、初のSFではないでしょうか。

今までにも妖怪のようなモノが出てきたり、
(「C.M.B.」20巻「Op.59 木片」)
水原可奈ちゃんがタイムスリップしたり
(「Q.E.D. -証明終了-」19巻「賢者の遺産」)
はありましたが、それらはいずれも
舞台設定がそうであるというにとどまっていました。

「タイムリープ」なくしては
このエピソードは成り立たない、
という意味で、初のSFではないかと思った次第です。

最後の1ページで、はじめて
物語の全貌があらわになるわけですけれど、
それを知りえるのは、われわれ読者
(と意外な仕掛け人)だけで、
主人公の青年はおろか、森羅くんでさえ
あの待合室で何が企まれていたのか、
分からずじまいで終わるというのも、
じつに高度なストーリーの見せ方だと思います。

また作画に関しても、
今さら言うまでもありませんが、
凝りに凝っています。

待合室に何気なく貼られたポスターや、
カウンターに置かれている商品。
歯医者さんの看板のフォントからロゴマークまで
もはやプロ・デザイナーが手がけたとしか思えない出来です。

青年が妄想の中で思い浮かべるゲームや
ラノベのタイトルも手が込んでいます。

「13回戦ったらもうラスボスと呼べないのでは!?」

「このダンジョンは127回目なのにまだクリアでき~」

などなど。
13も127も素数だというあたり、
加藤元浩先生のファンなら思わず
ニヤリとしてしまうところです。

森羅くんのパートナー、
七瀬立樹ちゃんの出番は
今回は表紙だけでした。が……

な、なんとヘアスタイルが
変わっているではありませんか!

慣れ親しんできた平安時代?の
お姫さまスタイルをばっさり。

ボブって言うんですか?
クレオパトラみたいになっています。

これは来月以降も目が離せません!

最後に、コミックスでは読むことの出来ない
雑誌ならではの「アオリ」を、備忘録がてら
引用させていただきます。

表紙のアオリ

いろんな治療(ケア)はお早めに!

最終ページのアオリ

意識を向ければ、些細なヒントが見えてくる。不思議な霧に出会ったら、あなたも未来を選択する時!?

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