『サイコ』(1960・アメリカ) ひゃん、ひゃん、ひゃん…。

バイオリンが奏でる「ひゃん、ひゃん、ひゃん」の不協和音をバックに、シャワー室の女性がめった刺しにされる…『サイコ』といえば、多くの人がこのシーンを思い浮かべるだろう。

久々に見返してみると、映画のメイン・テーマは気弱な青年ノーマン(アンソニー・パーキンス)と彼の母親との異常な関係性にあるようだ。

でも、そのへんの小理屈はやっぱりどうでもよくて、サイコと言えば「ひゃん、ひゃん、ひゃん」なのだ。

なぜ本作がこうも面白いのかというと、ヒッチコックが異常犯罪者であるノーマン青年のほうに共感を抱いて作られているからではないだろうか。

ノーマン青年が証拠隠滅のために、沼に被害者の車を沈めるとき、ズブズブと調子よく沈んでいた車体が途中で止まってしまう。

この時、見ているほうは「やったあ、完全犯罪やぶれたりぃ!」という気持ちもないではないが、むしろそれとは正反対の「やばい、どうしよう…」と焦る気持ちのほうを強く感じていることに気づかされる。

その後、車がふたたびズブズブ沈みはじめると、ほっと胸をなで下ろしている自分に苦笑…という方も少なからずおられるのでは、と想像する。

後半の医者の大演説は要らない気もするが、それを差し引いてもじゅうぶんに面白い映画だった。

ひゃん、ひゃん、ひゃん…。

『Psycho』 (Wikipediaより一部転載)

監督 アルフレッド・ヒッチコック
脚本 ジョセフ・ステファノ
原作 ロバート・ブロック
製作 アルフレッド・ヒッチコック
音楽 バーナード・ハーマン

出演
アンソニー・パーキンス
ジャネット・リー