『男はつらいよ 知床慕情』38作目(1987・日本)78点。ネタバレ感想

マドンナ = 竹下景子

ゲスト = 三船敏郎、淡路恵子

渥美清と三船敏郎は、それほどかみ合っているとは思えないけれど、今となっては絡みが観られるだけでも大変に貴重。

『男はつらいよ』シリーズを何本か観て、お約束が少しずつ分かってきた。
マドンナが、とらや(第40作目から『くるまや』に改称)への道を尋ねる相手はいつも佐藤蛾次郎であるとか、レギュラーであるにもかかわらず毎回役柄が違っているのが桜井センリだったり、笹野高史だったり、すまけいだったりとか。

もちろんこれは48作すべてに共通するものではないと思うけれど、佐藤蛾次郎のほうにマドンナが歩いてくるだけで笑えるようになったことが嬉しい。

余談だが、今回はすまけいが光っていた。
りん子(竹下景子)帰郷記念バーベキュー大会での感動のスピーチや、いきなり「知床慕情」を歌い出すところでは、涙腺が崩壊しそうになった。陰の主役はこの人かも。

今作のマドンナ、りん子の履歴を見てみる。
結婚を機に、生まれ育った北海道・知床を離れて東京へ移り住んだのが5年前。
3ヶ月前に離婚、その後も東京で一人暮らし。
今回、知床に戻ってくる。
その後一度上京し、アパートを引き払う。
再び、知床に戻ってくる。

という流れ。
これはどうみても、今後は生まれ故郷で誰かいい人と再婚して幸せになるのだろうと思ったら、何と最後に東京に就職が決まったところで映画は終わっている。

このあたりはさすがに1980年代の映画だなあと思った。
甘い夢ばかりを描くような安易な姿勢はそこにない。
ふるさとに働き口がないという現実。
志半ばで離農せざるを得ない一家の姿も描かれている。
そう簡単にはりん子を幸せにしないところに、山田洋次の厳しい一面を見たような気がした。

劇中で渥美清がこんな歌を歌っている。
「じいさん酒のんでよっぱらって死んじゃった。
ばあさんそれみてびっくらして死んじゃった」

この歌は『醉いどれ天使』(1948 監督 黒澤明、出演 三船敏郎)の中で志村喬が歌っていたものである、と松竹のサイトに書いてあった。
なるほど~、粋なことをしますな!

第38作 男はつらいよ 知床慕情|寅の巻全作品データベース|『男はつらいよ』|松竹株式会社

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あらすじ(ネタバレあり)

おいちゃん(下条正巳)が体調をくずし、入院した。
「とらや」は臨時休業。そこへ帰ってきた我らが寅さん(渥美清)
、さっそく見舞いに行ったのはいいが、医者(イッセー尾形)と大げんか。出入り禁止になってしまう。

タコ社長(太宰久雄)の娘あけみ(美保純)や、工場の従業員たちの協力で、「とらや」は再開することに。
寅さんも手伝おうとするが、電話番もつとまらず、途中で居眠りをする始末。
おばちゃん(三崎千恵子)のグチが耳に入り、傷心の旅立ちと相成る。

知床へやってきた寅さん。
ヒッチハイクで出会ったのが家畜の獣医・上野順吉(三船敏郎)。
頑固者と変わり者同士、なぜか気が合い、寅さんは順吉の家に泊まることに。

そこへやってきたのは「スナックはまなす」の雇われママ・悦子(淡路恵子)。
10年前に連れ合いを亡くした順吉のために、何かと世話を焼いている。
顔を合わせれば憎まれ口をたたき合う仲だ。

寅さんは悦子のスナックへ。
常連の船長(すまけい)、マコト(赤塚真人)、文男(油井昌由樹)らと盛り上がる。

順吉に、娘のりん子(竹下景子)から電話がかかってきた。
5年ほど前、親の反対を押し切り、駆け落ち同然で結婚して以来だ。
実は彼女、3ヶ月前に離婚したのだが、そのことは誰にも言っていない。

久しぶりの親子再会をジャマしては悪いからと、寅さんは上野宅を後にする……つもりだったが、玄関でりん子と会い、予定を変更する(笑)。

船長らは、町のマドンナ的存在だったりん子の帰郷に大喜び。
寅さんも加わり、酒宴だ、名所巡りだと、楽しく過ごす。
りん子は一度、アパートの精算のために上京。
その折、「とらや」を訪ね、寅さんの知床での人気者ぶりを報告する。

船長たちが毎夜のように集う「スナックはまなす」は、売り上げ不振のため売却が決定していた。
ママの悦子は、これを機に新潟に帰ろうと思っていることを順吉に打ち明ける。

「先生とはずいぶん長いつきあいだったね。手も握ってくれなかったけど」と水を向けるが、順吉ははぐらかすだけだった。

寅さんは、一緒になるように順吉にけしかけるが、鉄砲で撃ち殺されそうになる。
ただこれは、寅さんの話だけのことなので真偽のほどは不明(笑)。

りん子の帰郷を祝うバーベキュー大会が開かれた。
場所は灯台の下の見晴らしの良い原っぱ。

まさか来ないと思われていた嫌われ者の順吉もやってきたので、一同は困惑、迷惑。しかしこれは寅さんの思惑あってのことだった。なんとか悦子とくっつけようというのである。
みんなが楽しく過ごす中、順吉だけは一人離れて座っている。

こんな楽しい席なのに悪いんだけど、と前置きして、悦子がスナック閉店と、故郷の新潟へ帰ることを報告する。
どうして前もって相談してくれなかったんだ、と不満の声を上げる一同。

「先生にだけは話した。仕方ないって言ってくれた」

ここで順吉が口を開く。

「おれは言わんぞ、そんなこと」

「だって黙ってたでしょ」

「反対だから黙ってたんだ」

「どうして反対なの」

「理由なんかあるか」

ここで寅さんが後押し。
「な、おじさんよ。あんたがそこまで反対してるってのは、それなりのわけがあるんだろ? だったらそのわけをちゃんと言ってみな」

「おれが行っちゃいかんというわけは、おれが……おれが……おれが惚れてるからだ。悪いか!」

10年かかったその一言を聞いて顔を覆う悦子。
一同、大歓声。
みんなで「知床旅情」の大合唱。

その夜の「スナックはまなす」も当然盛り上がったが、船長が「寅さん、りん子ちゃんに惚れてるじゃないのか」とからかったため、寅さんは翌朝とつぜん旅立ってしまう。

りん子はその後、東京で仕事を見つけた。
再び「とらや」を訪ね、誘われるままみんなと江戸川の花火大会へ。

その頃、寅さんはというと、岐阜の長良川祭りに店を出していた。
夏の終わりの青空に、寅さんの威勢のいい口上が響き渡る───。

参考リンク ;

男はつらいよ 知床慕情 : 国民的スターと国際的スターの共演: こんな映画観たよ!-あらすじと感想-

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男はつらいよ 知床慕情 (Wikipediaより転載)

監督 山田洋次
脚本 山田洋次 朝間義隆
原作 山田洋次
音楽 山本直純
撮影 高羽哲夫
編集 石井巌

キャスト
車寅次郎:渥美清
諏訪さくら:倍賞千恵子
りん子:竹下景子
車竜造(おいちゃん):下條正巳
車つね(おばちゃん):三崎千恵子
諏訪博:前田吟
桂梅太郎(社長):太宰久雄
源公:佐藤蛾次郎
諏訪満男:吉岡秀隆
桂あけみ:美保純
船長:すまけい
マコト(船員):赤塚真人
ホテルの二代目:冷泉公裕
文男(漁協理事):油井昌由樹
医者:イッセー尾形
ゆかり:マキノ佐代子
アパートの大家:笹野高史
御前様:笠智衆
悦子:淡路恵子
上野順吉:三船敏郎

<男はつらいよシリーズ - 極私的星取り表>

No.01 ★★★★☆ 男はつらいよ (光本幸子、志村喬、広川太一郎)
No.02 ★★★☆☆ 続・男はつらいよ (佐藤オリエ、東野英治郎、ミヤコ蝶々、山崎努)
No.03 ★★☆☆☆ 男はつらいよ フーテンの寅 (新珠三千代、香山美子、河原崎建三、花沢徳衛)
No.04 ★★☆☆☆ 新・男はつらいよ (栗原小巻、財津一郎、三島雅夫、横内正)
No.05 ★★★★☆ 男はつらいよ 望郷篇 (長山藍子、杉山とく子、井川比佐志、松山省二)
No.06 ★★★☆☆ 男はつらいよ 純情篇 (若尾文子、森繁久彌、宮本信子、垂水悟郎)
No.07 ★★☆☆☆ 男はつらいよ 奮闘篇 (榊原るみ、ミヤコ蝶々、田中邦衛、柳家小さん)
No.08 ★★★★☆ 男はつらいよ 寅次郎恋歌 (池内淳子、吉田義夫、岡本茉利、志村喬)
No.09 ★★★★★ 男はつらいよ 柴又慕情 (吉永小百合、宮口精二、佐山俊二)
No.10 ★★☆☆☆ 男はつらいよ 寅次郎夢枕 (八千草薫、田中絹代、米倉斉加年)
No.11 ★★★★☆ 男はつらいよ 寅次郎忘れな草 (浅丘ルリ子、織本順吉、毒蝮三太夫)
No.12 ★★★☆☆ 男はつらいよ 私の寅さん (岸惠子、前田武彦、津川雅彦)
No.13 ★★★★★ 男はつらいよ 寅次郎恋やつれ (吉永小百合、高田敏江、宮口精二)
No.14 ★★☆☆☆ 男はつらいよ 寅次郎子守唄 (十朱幸代、月亭八方、春川ますみ、上條恒彦)
No.15 ★★★★☆ 男はつらいよ 寅次郎相合い傘 (浅丘ルリ子、船越英二)
No.16 ★★☆☆☆ 男はつらいよ 葛飾立志篇 (樫山文枝、桜田淳子、米倉斉加年、大滝秀治、小林桂樹)
No.17 ★★★★★ 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け (太地喜和子、宇野重吉、岡田嘉子)
No.18 ★★★☆☆ 男はつらいよ 寅次郎純情詩集 (京マチ子、檀ふみ、浦辺粂子)
No.19 ★★★☆☆ 男はつらいよ 寅次郎と殿様 (真野響子、嵐寛寿郎、三木のり平、平田昭彦)
No.20 ★★★☆☆ 男はつらいよ 寅次郎頑張れ! (藤村志保、中村雅俊、大竹しのぶ)
No.21 ★☆☆☆☆ 男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく (木の実ナナ、武田鉄矢、竜雷太)
No.22 ★★★★☆ 男はつらいよ 噂の寅次郎 (大原麗子、室田日出男、泉ピン子、志村喬)
No.23 ★★★★☆ 男はつらいよ 翔んでる寅次郎 (桃井かおり、湯原昌幸、布施明、木暮実千代)
No.24 ★★☆☆☆ 男はつらいよ 寅次郎春の夢 (香川京子、ハーブ・エデルマン、林寛子)
No.25 ※※※※※ 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 (浅丘ルリ子、江藤潤)
No.26 ★★★☆☆ 男はつらいよ 寅次郎かもめ歌 (伊藤蘭、松村達雄、村田雄浩)
No.27 ★★★☆☆ 男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 (松坂慶子、芦屋雁之助)
No.28 ★★★☆☆ 男はつらいよ 寅次郎紙風船 (音無美紀子、地井武男、岸本加世子、小沢昭一)
No.29 ★★☆☆☆ 男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋 (いしだあゆみ、片岡仁左衛門)
No.30 ★★★☆☆ 男はつらいよ 花も嵐も寅次郎 (田中裕子、沢田研二、朝丘雪路)
No.31 ★★★☆☆ 男はつらいよ 旅と女と寅次郎 (都はるみ、北林谷栄、中北千枝子、藤岡琢也)
No.32 ★★★★★ 男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎 (竹下景子、松村達雄、中井貴一、杉田かおる)
No.33 ★★★☆☆ 男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎 (中原理恵、渡瀬恒彦、佐藤B作、秋野太作)
No.34 ★★☆☆☆ 男はつらいよ 寅次郎真実一路 (大原麗子、米倉斉加年、風見章子、津島恵子、辰巳柳太郎)
No.35 ★★☆☆☆ 男はつらいよ 寅次郎恋愛塾 (樋口可南子、平田満、初井言榮)
No.36 ★★★★☆ 男はつらいよ 柴又より愛をこめて (栗原小巻、川谷拓三)
No.37 ★☆☆☆☆ 男はつらいよ 幸福の青い鳥 (志穂美悦子、長渕剛、桜井センリ)
No.38 ★★★★☆ 男はつらいよ 知床慕情 (竹下景子、三船敏郎、淡路恵子)
No.39 ★★☆☆☆ 男はつらいよ 寅次郎物語 (秋吉久美子、五月みどり、河内桃子)
No.40 ★★★★☆ 男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日 (三田佳子、三田寛子、尾美としのり、鈴木光枝)
No.41 ★★☆☆☆ 男はつらいよ 寅次郎心の旅路 (竹下景子、淡路恵子、柄本明)
No.42 ★☆☆☆☆ 男はつらいよ ぼくの伯父さん (後藤久美子、檀ふみ、夏木マリ、尾藤イサオ)
No.43 ★★★★☆ 男はつらいよ 寅次郎の休日 (後藤久美子、夏木マリ、寺尾聰、宮崎美子)
No.44 ★★★☆☆ 男はつらいよ 寅次郎の告白 (後藤久美子、吉田日出子、夏木マリ)
No.45 ★★★★★ 男はつらいよ 寅次郎の青春 (後藤久美子、風吹ジュン、永瀬正敏、夏木マリ)
No.46 ★★★☆☆ 男はつらいよ 寅次郎の縁談 (城山美佳子、松坂慶子、島田正吾、光本幸子)
No.47 ★★★★☆ 男はつらいよ 拝啓車寅次郎様 (牧瀬里穂、かたせ梨乃、小林幸子)
No.48 ★★☆☆☆ 男はつらいよ 寅次郎紅の花 (後藤久美子、浅丘ルリ子、夏木マリ、田中邦衛、村山富市、宮川大助・花子)
特別編 [1997.11.22] ★★★★☆ 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇 (浅丘ルリ子、江藤潤)
TV版 ★★★☆☆ テレビドラマ版 男はつらいよ
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